電脳ミツバチのコンピュータ広報室

銀座の屋上菜園を耕しています。コンピュータ畑も耕します。

数学の大統一に挑む②ーガロア群、リー群、そしてラングランズ・プログラムとは何か

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皆さんこんにちは。

前回書いた「数学の大統一に挑む①-群論からフェルマーの最終定理まで」はおかげさまで多くの方にご観覧頂きありがとうございます。

今回は後編です。

 

前回の知識がかなり必要となってきますので①を読んでない方は前からお読みいただけると幸いです。↓

 

straypccat.hatenablog.com

 

主に数論的見地からラングランズプログラムとは何かというポイントだけまとめておりますのでリーマン面など幾何学的見地は豪快に飛ばしております。もっと知りたい!というお方は是非本をご購入ください。

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第7章 ガロア群。数の対称変換について

 

さて、私たちはある年に生まれ、電話番号を持ち、たいてい口座番号を持っています。これらの数は1という数に1自身を幾つか加えることで作られています。こうしてできた数を自然数といいます。他に0という数や負数もあります。これらをまとめて整数といいます。さらには分数も含めた有理数があります。しかし数の中には有理数ではないものもあります。たとえば2の平方根。この有理数にはない新しい数の体系にはある秘密の特徴が隠されているのです。この数の体系はいくつかの「対称変換」を持っているのです。他の言い方をすれば、同じ体系に属する別の数に変換するルールを持っていると言えます。

f:id:computermonkey:20150926095403p:plainは方程式{x^2=2}の解であります。

f:id:computermonkey:20150926095403p:plain*f:id:computermonkey:20150926095403p:plain=2と確かに成立します。しかし実を言えばこの方程式には解が2つあるのです。ひとつはf:id:computermonkey:20150926095403p:plain、もうひとつはf:id:computermonkey:20150926095515p:plainです。例えばx+yf:id:computermonkey:20150926095403p:plainを入れ替えてx-yf:id:computermonkey:20150926095403p:plain、これを元に戻すとx-(-yf:id:computermonkey:20150926095403p:plain)=x+yf:id:computermonkey:20150926095403p:plain、と全く元に戻る恒等変換が起こります。このように{x^2=2}といった同じルールを持つある数に対して別の数に変換する事を対称変換と言います。

そして加法や乗法の操作を保存するような数体の恒等変換・対称変換の群をガロア群と言います。

 

もう一つ例をご紹介します。

前回はフェルマーの最終定理について見ていただきましたがフェルマーの小定理というものもあるということをご存知でしょうか?時計を見るとき我々は8時の6時間後を考えるときに8+6=14であるのに午後2時と考えます。この考え方が「12を法とする」といいました。pを法とする算術において「任意の数をp乗するとはじめと同じ数に戻る」のです。

{a^p=a}

たとえば3を法とする算術でa=2の時、2*2*2=8だけど3を法としているので{2^3=2}

もう一つ、5を法とする算術でa=4の時、4*4*4*4*4=1024だけど5を法としているので{4^5=4}

小定理と言ってもコンピュータのRSA暗号の基礎理論となるくらい極めて強力な定理です。このことは、数をp次のべきにするという操作、つまりaを{a^p}にする乗法の操作を保存する恒等変換操作は、p個の元からなる有限体のガロア群だということを意味します。

 

 

第10章リー群

群とは下記性質を満たす集合でした。

  1. 結合法則: a+(b+c)=(a+b)+c
  2. 単位元の存在:a+0=0+a=a
  3. マイナス元の存在: a+(-a)=(-a)+a=0

 任意の二つの元に集合の元を一つ操作させます。例えば整数の集合は、加法という操作を持つ群です。

リー群の概念は元の集まりで図形が現れる群のことを言います。リー群はノルウェーの数学者ソフス・リーに由来します。空間の回転は明らかに群になります。2週以上の回転の結果は必ず一つの回転で実現することができるので結合法則となります。逆回転はマイナス元であり,無回転が単位元であると言えます。これを回転群と呼びます。3次元の回転をあらわす行列は球面になります。3行3列、行列式が1の直交行列という特殊な球面の回転群は特殊直交群「SO(3)と呼ばれます。

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第15章ラングランズ・プログラム(結論)

先日書いた数学の大統一に挑む①のフェルマーの最終定理の項に出てきた志村ー谷山ーヴェイユ予想”任意の三次方程式”について、素数を法とする解の個数はあるモジュラー形式の「係数」であると述べました。さらにその”三次方程式”と”モジュラー形式”の関係は1対1が成立するという”3次方程式”とモジュラー形式との不思議なつながりがありました。ラングランスはこの関係だけじゃなく、もっと一般的なつながりがあると考えました。そしてモジュラー形式の代わりとして、リー群Gの時は解析学などで使われる保型表現がそれであると気付きました。そして一番面白いところはラングランズは保型表現が別のリー群のガロア群と繋がっているということを見抜いたのです。この時の別のリー群LGを「リー群Gのラングランズ双対群」と呼びました。そこから研究を進め、どのリー群Gに対しても別のリー群LGが存在し、リー群LGのラングランズ双対群はもとのリー群Gとなることが分かりました。特に球面の特殊直交群SO(3)の場合は2重被覆、つまりSO(3)の各要素に対してラングランズの相対群の2つの要素が存在することが分かったのです。例えて言えば別の世界の体重、身長、年齢といった全ての特徴が同じ男と女が存在し、男は女になり、女は男になるのです。なぜそんなことが起こるのか今も分かっていません。2つの異なる三次元表現があるという数学的見地から物理学者は陽子や中性子よりも小さなクォークと反クォークを発見しました。さらには電気力と磁気力を入れ替えるマクスウェルの古典的な電磁気理論にもラングランス相対群LGが隠されていることが分かり始めています。現在、数論、調和解析幾何学、表現論、数理物理学、量子物理学に至るまで実例を探し、なぜこんなことが起こるのか、それが何を意味するのかについてさらなる手がかりを探しているのです。

 

 

 

 

 

エドワード・フレンケル氏と訳者青木薫氏に感謝^^

 

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